〔コラム〕工業デザインとは何か

地球上で発生するモノやコトは、取り巻く環境との関係を深め、新しい状況を生み出しながら次第に量的広がりを見せるようになる。その量的広がりが頂点に達すると質的に変化して、いわゆる改革を促す。
そこで時間の経過に伴って新たなエネルギーが蓄積され、充実した内容へと発展していく。こうした運動を何回か繰り返す中で安定した状況が生まれ、最初に発生したモノやコトはスパイラルを描くように進化していく。 
むろんデザインとて例外ではない。
社会の進化の中でデザインは、どのような位置で、どのような役割を果たしているのか、また、その進化に対してデザインはどのようにかかわっているのか、行動する場合のポジションは何なのか、それらを人と生活、人と社会、人と企業、人と機械といった角度からインダストリアルデザイナーである私の目で捉えてみた。

デザインとアート(芸術)は基本的に異なる

創作を必要とすることでは共通するが同質のモノを数多く、間違いなく生産することがデザインの絶対条件であり、芸術作品は世界における唯一の存在である。したがって両者の違いは明確である。それはともかく、計画、創造、まとめに良い性能と品質が加味されてはじめて良質のデザインが生まれ、グッド商品の開発につながる。
その意味からも、デザインの重要性は形態の整理だけでなく、経営資源として注目されている。


デザインは経済を活気づける起爆剤となる

第一次世界大戦後、アメリカが大不況に陥った時、産業界を活気づけるのにインダストリアルデザイン(工業デザイン)が貢献した歴史がある。
当時、器具として造られていたものを人が使いやすく、親しみやすい道具に変えていったのはインダストリアルデザインの手法を産業界に実際に導入したレイモンドローイ(たばこのピースをデザインした米国のデザイナー)をはじめ、数名の先駆者である。
これらの先人たちが、商品に新しく付けたデザインという価値は需要を大いに喚起し、不況からの脱出につながった。それ以後、デザインは米国産業界にとって必要な経営資産として定着し、輝かしい足跡を刻んできた。

それに対して日本におけるデザインは、戦後わずか60年余りの歴史しかない。
1951年、 松下電器の松下幸之助氏がアメリカ視察の際に米国の百貨店に陳列されている様々な形のラジオを見て、疑問を持った。人間の顔が違うようにラジオの顔がそれぞれ違うということを知り、帰国後すぐに「これからはデザインの時代である」と言ったことはあまりにも有名である。これが日本におけるデザインのはじまりといわれている。
日本の産業界は近代的な生産性向上の手法と共に、インダストリアルデザインを米国に学び、その成果 を踏まえて、生産性の向上を図る目的の一つとしてデザイン手法を発展させてきた。振り返ってみると、企業経営者がデザインをビジネスの武器として位 置付けし、品質とコスト面の競争力の強化だけでなく、商品作りの手段に役立て高く評価したことは正解であったといえる。このような歩みを果 たしてきた今日のデザインは付加価値を創出する役割を担って企業戦略の柱へと成長し、経営の中枢を占めつつある。

1999年10月執筆 2011年 加筆

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